株式会社デンソー様への導入経緯
この方に伺いました
武内 裕嗣 様
株式会社デンソー
研究開発センター センター長
経営役員
株式会社デンソー様にインパクト・メソッドのコンサルテーションを
導入いただいたのは2013年6月でした。
以来、実践してみたいと手を挙げてくださる部門が増え、現在に至ります。
改めてデンソー様で導入するに至った経緯や導入を決められた武内様の
問題課題認識や思い、導入すると決断されたきっかけ、
現在の活動状況等のお話を伺いました。
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インパクト社
当時導入を検討するにあたり、コンサルタントより実際に導入した実績のあるお客様の生の声を聴きたいと、
同じ愛知県内にあるオムロンアミューズメント株式会社様へインパクト・メソッドを実践されている様子を見学に出向かれ、
松並社長(当時)にお話しを伺われたとのことでしたね。 -
武内様
実際にやっている方に直接お話を伺い、自分の目で見て判断したかったので、
すでにインパクト・メソッドを導入して成果をあげていたオムロンアミューズメント様に見学にうかがいました。
さらに松並社長にはデンソーにお越しいただき、インパクト・メソッドの実践事例をご講演いただきました。
当時から自動車業界を取り巻く環境変化への対応は最重要課題であり、多様化、技術の高度化、外部環境が
激変するなかで高い目標の実現のためには、時代に応じた仕事のやり方の改革が必要だと感じていました。
社内環境もグローバル化が進み、より組織や業務が複雑化していき、業務が細分化され、
委託の規模も拡がっていくとともに技術の空洞化も現れてきていました。
職場環境の様々な制約と業務への高い要求により人への影響も大きく影を落としていましたし、
特にコミュニケーションやモチベーションなど人系の課題が深刻になっている状況でした。
チーム内のコミュニケーションの活性化は必須だと思いましたが、
一方でそう簡単に解決できるものではないとも感じていました。
しかし、組織のコミュニケーション問題の解決は最優先で取り組むべきであり、そこが全てのスタートだと考えていました。
このような人系の課題に対して、手探りで解決策を探していたところ、インパクト・メソッドを知り、
有効なのではないかと思いました。 -
インパクト社
導入以来9年間弊社のコンサルティングを受け続けてきていただいていますが、
導入に際し、気をつけられたことなどありますか。 -
武内様
2013年当時、私は技術企画部の部長という立場でした。
各事業部にD-KI(※1)導入を呼びかけて、手を挙げて自主的に参加するチームを募ることにしました。
デンソーは”技術の会社”という社風もあって、まずは、
① スモールスタートをする。小規模でも意欲の高い部署に取組んでもらい、効果の検証を行う。
② よい事例を積上げながら、会社展示会や役員懇談会などでプロモーションをし、それから全社拡大を狙う。
というように、展開シナリオを考えました。
オムロンアミューズメント様の事例を伺い、真剣に取り組めば、必ず効果が出せると確信していたので、
このシナリオで見事に賛同してくれる仲間を増やすことができました。デンソー様においてのコンサル展開活動はD-KIという名称で呼ばれています。
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インパクト社
小規模から徐々に広げていかれたわけですね。
導入・展開のストーリーをきちんと描いて展開されるということが肝心ですね。 -
武内様
ただ、難航する場面もあったんです。ソフトウェア開発を主とする職場や企画部署のような機能部門では
「D-KIのやり方は自分たちの業務には合わない」と思い込んでいるマネージャー・メンバーも少なくありません。
そういう時は、これまでの成功事例と、D-KIの原理原則も合せて説明して、
意欲の高い部門を仲間に取り込んでいきました。
一度体験してもらうと、部門長が理解してくれ、経験したほぼ全ての部門長が継続して取組んでいくので、その部門に
どんどん広がっていきます。 -
インパクト社
ソフトウェア部門の方々にインパクト・メソッドの考え方をご理解いただくのには私たちもかなりエネルギーを使います。
インパクト・メソッドの進め方の特徴の1つに”仕事の見える化”がありますが、ハード系の開発部門では比較的実践が
容易な絵や図を描き、課題を検討するということが、ソフトウェアの開発部門ではアウトプットの量が膨大且つ絵や図に
描き表すということが難しいという仕事の特性がありますね。
考えていることを共有するには描きながら議論をすることはとても有効なのですが、
デジタルにこだわるあまりコミュニケーションスタイルを変えることができない方も多いと思います。
しかし、本質的なコミュニケーションを体感していただくと、仕事の見える化の必要性を理解され、
仕事のやり方を変えることができる方が多いです。
ソフトウェア開発の部門も含めてデンソー様の開発部門でD-KIをもっと広げていきたいとお考えですか? -
武内様
そうですね。なぜ活動を拡大したいかというと、やはり今のデンソーを取り巻く環境変化があります。
より速く、より大規模に、より高い目標の開発が急速に増えています。
そのなかでソフトウェアの重みは著しく増えていきます。
開発体制もグローバルになり、多様な考え方・背景を持つ仲間との協業が必要です。
このような業務環境の変化から、チームワークによる総智・総力の発揮がより一層重要だと考えます。
D-KIはチーム力を高めるトレーニング手法なので、継続して取り組みデンソー全体のチーム力向上につなげたいです。 -
インパクト社
デンソー様の部長クラスの方は「仕事のやり方」を変えていこうという意識が強い方が多く、
同じ部長さんで毎年フルコンサルティングコースに参加される方もかなりいらっしゃって、
みなさん熱心に取り組まれています。
1人の部長が抱える組織・部下の方の人数も多いので、フルコンサルの受講も続けつつ、横展開も取り組まれています。
武内様がD-KI活動に取り組んでいる職場を見られて感じられている変化や成果、
また具体的に印象に残っている職場での変化・成果などがございましたらお聞かせください。 -
武内様
一番の変化はやはりチーム力の向上です。
デンソーは個力の高い人材は多いですが、すべての職場がシナジー効果を出しているわけではないと
痛感する場面がいくつもあります。
D-KIに取り組んだ組織はチーム戦による問題課題解決ができて、その結果業務の質向上になるケースは
多いと感じますし、特に段コミ(※2)はチームにとっても、
個々人にとっても成長の場でもあり、個力も伸ばせる場と感じています。段取りコミュニケーションの略称です。仕事の段取りをする場面のことを指します。
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インパクト社
個人での仕事からチームで仕事をやるようになると確実に仕事のアウトプットの質は向上します。
どんなに優秀な人でも個人としての能力には限界があります。一人では発想も広がりません。
また、個人戦からチーム戦に変わると人はよりポジティブな考え方に変わり、
仕事に対するモチベーションが上がるケースが多いですね。
現在はコロナによりリモートワークが進み、仕事のやり方が変化したため
職場のマネージメントに悩んでいる方も多いと思います。
これからの職場のマネージメントについて武内様が感じられていることなどはございますか。 -
武内様
今後は働く方々の価値観が多様化し、働き方のスタイルも多様化していくと思います。
リモートワークも定着していきますし、グローバル協業もさらに増えると思います。
したがって、仕事の授受コミュニケーションがより難しく、より重要になると考えています。
D-KIは業務の授受コミュニケーションの円滑化を基本の一つとしていますので、継続して取り組んでいきたいです。 -
インパクト社
コロナ禍以降他のお客様でもリモートワークが進んできています。D-KIを受講された方々が口にされるのは
「FACE TO FACEでアナログの手段に勝るコミュニケーションはない」ということです。
本質的なコミュニケーションを体験しているとリモートでのコミュニケーションとの差がわかります。
そこからリモートコミュニケーションに対する改善のアイデアが生まれます。
これからリモートワークがなくなることはありませんが、私共が危惧しているのは本質的なコミュニケーションを
体感しないままリモートでのコミュニケーションに移りコミュニケーションの質が低下していくことです。
2021年からは防疫の観点からデンソー様では全てリモートでのコンサルティングを実施しています。
対面のコンサルティングと比べると、考えていることの伝えにくさや相手の反応の分かりにくさがあり、
難しい面もありますが、受講するほぼ全チームが一定期間で修了合格レベルまで達しています。
これもD-KIを受講するデンソー様の方々が熱心に取り組まれているお陰だと思います。
リモートでの取り組みの違いなど武内様が感じられていることがございましたらお聞かせください。 -
武内様
対面コンサルの良さは、まず講師の熱意が伝わりやすい点にあると思います。
また、聴衆の表情から理解度や納得感が感じ取りやすく、相手のレベルに合わせた指導をしてもらえます。
一方で、働き方の多様化は時流であり、D-KI含め仕事の進め方を革新していくことは重要です。
状況によって、リモートと対面をうまく組み合わせていけばよいと感じます。 -
インパクト社
デンソー様では2015年から社内指導師(※3)養成コースを開設して指導師育成の育成にも力を入れておいでですよね。
弊社の社内指導師養成コースを受講され、指導師として活動されている方々には弊社コンサルタントと連携して
活動していただき、よい結果につながっています。デンソー様の社内およびグループ企業様に限定してD-KI(=インパクト・メソッド)の考え方と実践の指導をする社内コンサルタントの役割をする方々です。指導師になるための教育コースを修了された方々を指導師として認定し活動されています。専任ではなく、主業務を持ちつつ、2つの役割を持たれています。
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武内様
デンソーでは2013年当時はインパクト・コンサルティング社のフルコンサルが主でしたが、展開スピード向上のため、
社内指導師もインパクトさんに育成してもらっています。
現在は10数名が指導師として活躍中で、さらに今年(2022年)は10名ほど育成中です。
社内指導師はインパクトさんと比較して経験が浅い弱みはあります。デンソー文化をよく理解していて、
身近にいるからこそ現場に寄り添った動きがとれる強みもあります。
フルコンと指導師を並行し、D-KIの横展開を行っています。 -
インパクト社
指導師の方々も自部門をよくしたい、会社に貢献したいという熱意のある方々が熱心に取り組まれておられますね。
社内指導師の方々に対する武内様の思いと今後の期待をお聞かせいただけますか。 -
武内様
デンソーおよびグループ会社の職場力を向上させるためにD-KI導入しています。
指導師は普及加速のために育成された人材です。
指導師自身も職場力向上に貢献したいという強い思いから、2年間休日返上(※4)で頑張って訓練を受けています。
ここが出発点だと思います。
指導師にはぜひこの趣旨・初心を忘れずに活躍してほしいです。
プロのコンサルに比べれば経験が浅いことはやむを得ないと思いますが、デンソーでのキャリアを生かして
職場に寄り添う支援をしてほしいと思います。
指導師個々人の個性が異なり、指導スタイルも人により異なりますが、チーム戦でより質の高い指導を
目指してほしいと思います。
それから、指導師自身も成長意欲をもって成長し続けてほしい。
最後に、組織のしがらみにとらわれず職場の問題課題と戦ってくださいとエールを送りたいですね。
困りごとあれば、いつでも相談に乗りますのでぜひ力を発揮してほしいです。指導師の育成をするコースは実業務との兼ね合いから、毎月1回土曜日での実施をしています。
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インパクト社
指導師の方々へ期待することは指導師同士のチーム戦、自身の研鑚、組織を超えた動きということですね。
弊社への期待やご意見、またD-KI活動を通じて今後実現したいことはどのようなことでしょうか。 -
武内様
D-KIは成果を出す仕事の進め方トレーニングなので、ある程度時間をかける必要があることは理解しています。
ただ、工数、特に初期研修に要する工数は活動参加のハードルになっていることも事実です。
活動効果レベルを維持したうえ、プログラム短縮できたら嬉しく思います。
D-KI活動では、組織の成果と組織力の向上を継続的に、同時実現できることに期待しています。 -
インパクト社
インパクト・メソッドのコンサルプログラムはコンサルティングを実践する中で、どうしたらよい結果がより速く出せるか、
試行錯誤で作り上げてきたものです。
D-KIはある意味仕事に対して各自が持っている「価値観」を大きく変えて行動に移していく活動でもあるため、
特にコンサルティングの初期研修の段階に「(受講者の)気づきの深さ」が必要になります。
そのために初期研修に一定の時間をとらせていただいています。
受講する方々の貴重な時間と費用をかけて実施するものですので、弊社としては常にコンサルティングの結果に
こだわっていきます。
最後に、これからインパクト・メソッドの導入を検討をされている方々へのメッセージをいただけないでしょうか。 -
武内様
D-KIはナレッジワーカーの生産性向上と成長を同時実現できる訓練です。
自職場・会社において、コミュニケーション不全、生産性が低い、組織員が生かしきれてないなどの課題を感じたら、
一度試してみる価値はあると思います。
結果を出すまでは多少時間がかかりますが、トップ自ら思いを伝え、リードしていけば必ず成果に結びつくと思います。 -
インパクト社
武内様ありがとうございました。