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リモートミーティングにおけるコミュニケーションの「質」を考える

㈱インパクト・コンサルティング 宗像 宏

コロナ禍で加速されるリモートミーティング

新型コロナ禍の中、各社でリモートワークの導入が加速され、設計開発チームのミーティングもZoomやTeams等のWeb会議サービスを使ったリモートミーティングが主流になってきている。現行ではほぼ100%リモートでのミーティングを行っているというクライアント様もおられる。そこで開発設計部門でのリモートミーティングの生産性を上げるにはどう考えるかということについて考えてみた。

リモートミーティングに対しての受け止め方

Web環境のミーティングのメリットとしては「移動しなくても参加できるので物理的に楽」とか、「上司に相談する機会が増えて良かった」ことがあげられる。Web環境の技術が向上した昨今、従来のやり方からWebを利用したやり方に変えたいと考える方もおられるようだ。

一方デメリットとしてよく聞かれる意見として、「出したい仕事のアウトプットのイメージが伝えにくい」(上司)、「上司の言っていることが伝わりにくい」(部下)というものだ。その結果、出したものが全く違うものになってしまったり、仕事の手戻りが発生してしまう。

さらにチーム全員が参加しているのに会話の当事者が上司と部下の一対一になってしまい参加している全員の時間が有効に使えていないケースも出てきている。

また、上司が部下に順番に一対一で話しているので会議時間が延びてしまうというケースも聞かれる。ミーティングを通して話す人が限られてしまい、ミーティングに参加していても最後までしゃべらず存在感が無い人も出ているとの意見も聞かれた。

これらのケースは対面のミーティングでも起こっているが、リモートではより顕著になってきている。ミーティングの生産性という観点からは懸念されるものだ。

さらに心理的な面では、ビデオで顔が出ていないと相手の反応が分からず、気持ち悪いという意見もある。

設計開発部門のリモートミーティングの現場で起こっていること

Web環境のミーティングの中で設計開発部門に何が起こっているのだろうか。

まず言えるのは「仕事の授受のコミュニケーションの質」の低下だ。開発設計部門で要求されている仕事のアウトプットイメージには、新規性の高いものが多く含まれる。開発する製品のアウトプットイメージは単純に口頭や言葉の羅列では表現できない。お互いに考えていることを共有するためには、上司、部下、チームメンバー間で開発する製品の全体像を描きだす必要がある。そして性能目標、目標を達成するために考えうる課題が開発対象製品の全体像の中に位置づけられなければならない。

各々が考えているイメージを描きだしながら「あーでもない」「こうでもない」と議論するなかで目標を達成するため課題が共有されたり、課題に対する解決のアイデアが浮かんでくる。このような「頭の中で考えていることの共有」はWeb会議での口頭の議論では起こりにくい。電子ホワイトボード等のツールを使って書き出して議論したとしても、実際に顔を突き合わせて考えていることを書き出して議論することにはかなわない。

コミュニケーションの質の低下に伴って「チームワークの質」の低下も起こってくる。

Web会議では上司と部下の一対一のコミュニケーションはできても仲間同士のコミュニケーションが起きにくい。人の考えていること、伝えたいことは言葉だけだと全体の数パーセントでしかないという。相手の表情や反応、話す言葉のトーン等非言語の中身に含まれる情報量の方が圧倒的に多い。非言語の情報の共有はWeb環境のミーティングでは難しい。要するに同じチームの人達の情報が圧倒的に不足するのだ。その結果、一つのチームとしてのチームワーク意識の醸成が難しくなる。チームとして協力しあっていくには、お互いを知ることが大切なことだからだ。

コミュニケーションの質とチームワークの質が落ちた環境の中で、課題認識も持てないままミーティングを続けていけば、チームとしてのコミュニケーションの質とチームワークの劣化が進んでいくだろう。

そうはいってもWeb会議は今後増えていくことはあっても、無くなることはない。それでは、どのようにしていけばWeb環境でのミーティングにおいて「仕事の授受のコミュニケーションの質」と「チームワークの質」は保っていけるのだろうか。

本質的な仕事の授受のコミュニケーションとは

「本質的な仕事の授受のコミュニケーション」とはどういうものだろうか。それは過去のやったことの確認やマネジャーによる部下への指導会とは異なるものだ。未来に向かってやるべきことをチーム全員が考え、その考えを書き出して共有すること。さらに良い結果につながるために、発想を広げていくことができるコミュニケーションだ。チームメンバーが議論の対象を自分事としてとらえて、脳ミソフル回転させることと。そして、各人が考えていることを書き出してチーム全体で共有できるコミュニケーションだ。

弊社のコンサルティングを受けて「本質的な仕事の授受のコミュニケーション」の良さを体験したマネジャーは「Web環境でのミーティングに比べて対面でチームメンバーが集まったミーティングは質が違う」と異口同音に言う。

対面での「本質的な仕事の授受のコミュニケーション」を体験していれば、Web環境のであっても、コミュニケーションの質が落ちないようにさまざまの工夫ができてくる。そして、出したい仕事の結果に向けて、マネジャー、メンバーそれぞれが自立して考えることができているようになる。

ここでWeb環境のミーティングの工夫として弊社のコンサルティングを受けているマネジャーが実践していることを記しておきたい。

・出したい仕事のアウトプットイメージを具体的に描き出し、アウトプットイメージの中の個々の目標達成の課題を明確にする。文字だけの議論は避ける。
・見えてきた課題の解決のために全員が脳ミソをフル回転して考え、しゃべるようにうながす。その時に電子ペンを使ってお互い考えていることを書き出して共有できる環境にする。
・ミーティング中は「顔」を見えるようにすること。ビデオなしでの参加にしない。
・Web環境でのミーティングと対面でのミーティングを内容によって使い分ける。スタート段階の設計開発テーマや、大きな不具合が発生して早急な対策が要求されているテーマについては、対面で話し合うことが有効だ。一方、日々の状況確認や進捗確認や情報共有はWeb環境でのミーティングの方が効率がよい。

以上、新型コロナ禍以降数が増えてきたWeb環境のミーティングについて現状起こっていることと、有効なリモートミーティングを進めていくための考え方を述べた。

Web環境のミーティングでも有効なコミュニケーションをしていくためには、まずは対面の環境で「本質的な仕事の授受のコミュニケーションができているチームであること」が重要だということを最後にお伝えしておきたい。